赤い電車のあなたへ







わたし達は9時18分発のE駅行きに乗れた。


もちろん各駅停車で終点まで行く直通列車。


車内はガラガラで、余裕で座れた。


一両目一番前の席に立野先輩と夏樹、その後ろにわたしとほたるが座る。


本当ならあの人が立ってた二両目のドア付近に行きたかったけど。立野先輩がここを勧めてくれたから。


「さて、乗ってからなんだけど。どっか行きたい場所はある?」


立野先輩が前の席から身を乗り出して訊いてきた。


ドキッと期待感から胸が高鳴る。


やっぱりわたしから言うべきだよね? 龍ヶ縁に行きたいって。


でも、理由を訊かれたらどう答えよう。ハイキングに行きたいって言うには説得力ない。わたしはサンダルを履いてるから。前もってピクニックだって言っておけば説得力があったのに、と今気付いた。


あ~! わたしのドジ!!


ドジさを呪ったわたしは、自分の頭をポカリと殴った。


「鞠、どうかした? どっか行きたいんじゃないの?」


ほたるから怪訝そうな声が出て、わたしが顔を上げれば。夏樹からも何やってんだって目を向けられてた。


あわあわ、と慌てたわたしは、誤魔化したい気持ちで思わずこう言った。


「りゅ……流星峡が見たいなあ」