中学三年の鞠は人見知りで内気。周りの人間と上手く行かず、逃げるように遠い朝霧の町の高校へ進学を希望していた。その下見と下宿先への挨拶を兼ねた夏休みの訪問。そこで鞠は、一瞬見ただけの、赤い電車に乗った男性の笑顔に一目惚れしてしまう。一年後、無事に朝霧高校に進学した鞠は、早速赤い電車の彼を捜し始める。捜索は困難だったが、鞠は諦めることなく毎週末に電車に乗り捜し続ける。資金を稼ぐためにアルバイトまでしながら。それは、今までなにかあれば諦めるか逃げるばかりだった彼女が、初めて強い意思で成し遂げようとしていたことだった。 何ヶ月も掛けて根気よく捜し続けた結果、彼との再会が叶う。けれど実は彼には既に想い人がいて、悲しい事情があった。けれど彼は鞠の努力に胸を打たれ、一度東京に帰るがまた会おうと約束。二人は何年も手紙でやり取りをするうちに、やがて互いに大切な人と気づき想いが重なってゆくのだった。