赤い電車のあなたへ





けれど、秋の始まりの9月に入って良子さんの体に異変が起きた。


度重なる出血や痛み……。


大事を取って松田診療所に入院したものの、9月の中旬に良子さんはお腹の子を亡くした。


原因は、わからなかった。


その時良子さんはただ茫然自失状態で。それでも周りの懸命な励ましで時間をかければ、しっかりと自分を取り戻したに見えた。


龍太さんもこんな状態で良子さんを帰すわけにはいかず、せめて落ち着くまではと帰りを先延ばしにしていた。


けれど。


12月のある雪が降る日、良子さんは三日湖に身を沈めた。


龍太さんが命がけで助けたものの、良子さんの意識は戻らずに近くの大きな病院に入ったまま目覚めないという。


「……良子には二度と会うな。良子の家族にはそう詰られた。当然だよ……僕は良子と子どもと約束。何ひとつ守れなくて。
だから、帰れずにずるずるとここに居続けてる。
結局僕も卑怯者なんだ。逃げているだけなんだよ」


そんなふうに心情を吐露する龍太さんは、心なしか震えていて……気のせいかすこし小さく見えた。


「龍治や美樹は気にするな、精一杯やったんだからと言ってくれるが……僕が良子の代わりになったら、とさえ考えた」