赤い電車のあなたへ




そして、龍太さんはぽつぽつと今までの事情を全て語ってくれた。


良子さんが妊娠したと解ったのが、去年の初夏だと言うこと。


もちろん貴史さんの両親が生むことを認めるはずがないから、龍太さんが無理やり良子さんを連れ出したという。


「何もかも僕の勝手な行動だったんだ。
美樹は解っていて協力してくれたが……良子は余命幾ばくもない貴史の側にと望んだんだ」


しかし、妊娠が良子さんの親に遂に知られてしまい、騒ぎになってしまった。


その結果貴史さんの両親も妊娠を知る事になり、2人の交際が発覚。2人は引き裂かれる上に赤ちゃんを生まない選択を迫られたという。


周囲のみんなから若すぎる、身分違いと猛反対された。けどもちろん良子さんは産みたいと望んだ。入院した貴史さんも人づてに産んでくれと伝えてきた。


“今は弱ってしまったけれど、きっと元気になるから”と、遠く離れてやり過ごしてと貴史さんは望んで。


“いつか、迎えに行くから待っていて”


そして、貴史さんは龍太さんにも託した。

“どうか良子と子どもを守ってやってくれ”と。
貴史さんのその約束に後押しされ、龍太さんは決意した。


何をしても良子さんと子どもを守ろう、と。