やっぱり龍太さんは優しい。そんなふうに慰めてくれると分かってた。
だからこそ、なおのこと自分が許せない。こんなに優しい人を……わたしは。
「違います……っ! あれはわたしが。わたしなんて消えてしまえばいい……こんなわたしなんて要らない!消えてしまいたい!」
なおも言い募ろうとしたわたしだけど、背中に思いがけない力強さを感じて、自分の顔が固い何かに押し付けられた。と感じて息苦しくなる。
「……もう、いい。もういいんだよ。そんなふうに自分を責めるな……起きた事を悔やむならば……これからに活かせばいいんだよ。
君は良子のようになって欲しくない……良子は……せっかく授かった貴史との子どもを流産して、自分を責めるあまり消えようと……冷たい冬の湖に沈んだんだ。
そして……今はいつ目覚めるかわからない夢を見続けている。
あの悲しみを……僕に味あわせないでくれ。君は……生きなきゃいけないよ……」
そして。
わたしの首筋に龍太さんの温かな滴が次々に伝い落ち、わたしの背中を濡らしていく。
「君は……生きるんだ。鞠ちゃん……」
龍太さんの悲しみに満ちた響きは、わたしの凝り固まった心をゆっくりゆっくりと溶かす。
「……っ……」
龍太さんに抱きしめられたわたしは、彼にしがみついたまま2人で思いっきり泣いた。



