赤い電車のあなたへ




二度と、会わない。


それはわたしが決めた事だけど、周りのみんなに悟られないようにすまいと思った。


現実に気付いただけ。


恋の魔法が解けて、おとぎ話が終わっただけ。


「2人は幸せに暮らしました。めでたしめでたし」……なあんて。子ども向けの童話だからこそ出せる結末。


現実は、そんなにうまくいくはずもない。


わたしは滴る雫を急いで拭うと、顔を上げて龍治さんに告げた。


「いいんです。わかってましたから。ぜんぶ……わかってますから」


そして、龍太さんの顔を見て続ける。


「よかったら……龍太さんのお世話はわたしにさせてください。お詫びをしたいので」


あくまでも“お詫び”という点を強調してお願いしてみた。図々しいと断られるなら、せめて謝罪を龍太さんに直接したい。たぶん、それもかなり図々しいのかもしれないけれど。


「ああ、それなら構わないしむしろ歓迎するよ。龍太は明日には目が覚めるだろうって松田先生も話してたし。その間龍太のそばに居てやって」


「……はい。ありがとうございます」


わたしは龍治さんにぺこりと頭を下げ、彼が病室から出ていくのを見送った。


そして、ふうっと息を着いてベッドの側にある椅子に腰掛ける。