赤い電車のあなたへ




「はあ、はあ……」


おかしいな。わたしの記憶だと確かこの辺りだと思ったのに。


ぽっこりと突き出していて、てっぺんまで三角形で、葉っぱが細長い樹があるのは。


わたしは低木の茂みをガサガサとかき分けながら進み、不安を感じてきていた。


本当にこっちでいいのか? もしかしたら全くの逆方向じゃないのか?


わからない。わかんないよ!


全く初めての土地でガイドもいなくて、方位磁石も地図もない。暗くなりつつある空。もし携帯電話があっても繋がらない場所なんだよ。


こんな状態でどうやって進めるの!?


腕時計を見てゆうに1時間は進んだとわかり、わたしは半ば絶望感を抱きながらその場にしゃがみ込んだ。


痛みと疲れと不安と。いろんなことがぐちゃぐちゃになり、一度流れ始めた涙はなかなか止まらなかった。


「ひっく……やだ……やだよお! 龍太さんが死んじゃったらどうしよう……」


わたしは自分が迷子になるよりも何よりも、龍太さんの方が気がかりでたまらない。


「龍太さん……助けて。龍太さん」


本末転倒な話だけど、わたしは龍太さんに助けを求めた。