赤い電車のあなたへ




わたしは龍太さんと通った記憶を頼りに、元来た道を捜しつつ歩いた。


確か龍太さんがわたしを背負って30分ほどで入れたはず。この足だと倍は掛かるかもしれないけど、とにかく先に進んで町に着かないと。


わたしは懸命に記憶のある道を捜して歩いた。


確か龍太さんが万が一のために、と通り道の樹に赤いシールを貼ってた。両手が使えない彼の代わりにわたしがやったのだけど、だからどんな樹に貼ったのかは覚えてる。


わたしは必死にその目印の樹達を捜そうとした。大きな樹だったから記憶に残ってるはず。


森の中はアスファルト舗装なんかされてない。平坦な一般道と比較にならないほど足場が悪く、障害物ばかりだ。


樹の隙間や石や岩や段差に木の根や倒木等だって影響してくる。そんな場所を通るから時間が掛かるし、足への負担もかなりある。


挫いた足の痛みと熱がひどくなって、できたら今すぐやめて休みたくなるけども、やめちゃいけない。


龍太さんのためなんだ。わたししか龍太さんのピンチを伝えられないんだ。


携帯電話を持っていたとしても、ここだと電波が届かないから繋がらない。


わたしは手のひらで滝のような汗を拭い、細かな傷に汗がしみて顔をしかめた。


ぐずぐずしていられない。わたしは進むしかないんだ。と決意をして痛む足を引きずり歩き出した。