赤い電車のあなたへ




とりあえず目立った外傷はないようでいだけど、もしかしたら内因的なダメージを負っているかも。


気を失っているところを見れば、頭を打ったのかな?


それとも内臓のどれかがやられたか……。


いずれにしても事は緊急性が高い。もしこのままだと命を失う危険性があるとしたら?


ドクッと全身が嫌な音を立てて体が震えた。


いや……。


そんなの、いや!


せっかく逢えたのに!!

わたしのせいで死なせたくないし、まだ知りたくてまだ触れ合ってない。


それでも、わたしでは呼びかけ体を譲るが精一杯で、具体的にどうすればいいか思いつかないし判断もできない。


好きな人を助けられないもどかしさに歯噛みし、情けなくて悔しいけど。わたしは自分の手に余ると判断し、助けを呼ぶことを選択した。


だんだんと陽が西に傾き陰が濃くなり、太陽のぬくもりが奪われ気温が下がったせいか、肌寒さを感じる。


わたしは自分の荷物から小さな上着を出し、龍太さんの体を覆った。彼の体をさすりながら、聞こえてないかもしれないけど、声をかけておいた。


「龍太さん、出来るだけ早く助けを連れて戻るから、それまで頑張ってね!」


わたしも頑張るから。
口の中でだけ呟いたわたしは、後ろ髪引かれながら斜面を登り始めた。


もちろん痛めた足を庇うとだめだから、痛みを堪えて懸命によじ登る。手の皮を擦りむき、あちこちが土や泥で汚れても構わない。


「あ……っ!」


半分ほど登ったところで滑落しかけ、なんとか踏ん張ったけどさらに1メートル戻るはめになる。


それでもわたしは歯を食いしばりながら斜面を登り続ける。