龍太さんはわたしと手を繋いだまま、ゆっくりとビニールシートに寝ころんだ。


わたしの意図を理解してくれたのか、的確な位置に頭を持ってきてくれる。


わたしがドキドキしながら彼の隣に横たわり、つぶった瞼を開いて空を仰ぎ見た。


そして見えたのは、空を飛ぶシラサギ。


真っ青な夏の空に白い鷺草が映えて、本当に鷺が飛んでいるよう。湿原を抜ける風が鷺草を揺らし、羽ばたく鷺を連想させた。


周りに咲く鷺草で何羽もの白鷺が優雅に舞う。


日頃目にできないちょっぴり幻想的な光景に目を奪われた。
龍太さんも同じように感嘆したか、繋いだ手にかすかに力が籠もる。


わたしも龍太さんも時間を忘れてそれに見入った。


たぶん、言葉は要らないんだと思う。

同じ時間と同じ感動を共有できた。わたしはそれだけで泣けそうなくらい幸せを感じた。






「そろそろ帰ろうか。陽も傾いてきたし」


龍太さんがそう言ったのは、森で散策したあと。わたしは龍太さんの案内でいろんな場所を回った。


「湖が近いし少し風が冷たいから」


龍太さんはそう言って羽織ってたシャツをわたしの肩に掛けてくれた。


「あ……ありがとうございます」


わたしはもうドキドキが最高潮で、龍太さんの顔をまともに見られない。