言われてみれば、確かに白鷺が翼を広げている姿にそっくり。


鷺草だなんて言い得て妙で、的確なネーミングだと感心した。湿原を抜ける風に吹かれて揺れる花は、本当に鷺が飛んでるみたい。


わたしは興味を持って足を庇いつつ、倒木から立ち上がる。


そして、一番大きな鷺草の近くに行くと手頃な場所を探した。


「鞠ちゃん、あんまり歩くと足が悪くなるよ」


龍太さんが気遣ってくれたついでに、わたしはすこしわがままを言う。


「すいません……鷺草が咲いてる近くで寝そべれないかなって濡れない場所を探してるんですが」


「そりゃあ無理だよ。一応湿原だし泥まみれになっちまう」


龍太さんがそう言いながら、何やら気付いた顔になった。


「そうだ。ちょっと待ってて。確かこのなかに……」


龍太さんがリュックの口を開き、ごそごそと中を漁る。そして、彼が取り出したのは青いビニールシート。彼が両手で広げればかなり大きくて、人ひとりくらいは平気そうだ。


「どのあたりに敷けばいいかな?」


思わぬアイテムの出現に、龍太さんの視線を感じて慌てて指し示した。


「こ、ここでいいです」