「……ありがとう」
龍太さんはわたしに軽く頭を下げ、龍治さんはわたしに軽く頷いた。
「わたし、すこし散歩でもしてきます」
飲めなかったジュースをカバンにしまい、挫いた足を庇いながら旅館の外に出た。
はあ、と息を着いて空を見上げる。
真っ青な空には綿雲が浮かんで、きれいなんだけどすこし寂しい。
遠慮して出てきたのは自分だけど、少しは引き留めて欲しかったかもしれないな。
もちろん、会ったばかりの人にそんな振る舞いを期待するのもおかしいけど。
今ごろ龍治さんは真相を知ってるかな?
振り向いて正面玄関からチラッとなかを見て、またため息を着いた。
仕方ないから散歩しよう、と右足首を庇いながら足を踏み出したわたしだけど。
砂利道でいきなり腕を取られ、ぐいっと引っ張られてびっくりした。とっさだから体勢を崩しかけ、慌てて近くの柱にしがみつこうとしても、容赦なく腕を引かれる。
相手は誰かと軽く睨み付け、すぐにわかった。。
「夏樹! ちょっと待って……なんで腕を引っ張るの? 痛いよ」
わたしは痛む足を踏ん張って抵抗したけど、夏樹は半ばわたしを引きずる形でいて。わたしは我慢ならなくて叫んだ。
「どうしてここにいるのよ! ほたるが駅で待ってたはずでしょう」
「ほたるは関係ない!」
夏樹に怒鳴りつけられ、わたしはビクッと体が強張った。
「鞠……おまえは何もわかってない」
夏樹は歩調を緩めてボソッとつぶやいた。



