龍太さんが自転車を漕ぎ始めると、こんなにスピードが出るんだ、とおっかなびっくりで彼にしがみついた。
わたしが漕ぐ速さと全然違う。
過ぎ去っていく周りの景色も、頬に当たる風の強さも。
ドキドキと忙しない鼓動が伝わらないか、と心配したわたしは、龍太さんから気持ち体を離してた。
ドキドキドキドキ。
こんなにときめいているのは、龍太さんと一緒だから。
彼は時々声をかけてくれるけど、それ以外は黙って自転車を漕いでいた。
おしゃべりな人じゃなくて良かった。自転車では話しにくいし、話しているうちにポカをしてしまうかもしれないから。
それでも、たった数時間前には想像もしなかった今の幸福に、わたしは涙が出そうに嬉しくなった。
こんなにも間近に龍太さんを感じられて、たくさん話して。親切にしてもらえた。
大丈夫かなと自分でも思うくらい幸せで。
そんななかなぜか胸に微かな疼きと痛みを感じたけど、わたしはそれを見るまいとした。
それを直視してしまったら、きっとよくない事なのだと思う。



