赤い電車のあなたへ




「別に、普通だよ」


龍太さんは控えめに笑ってこう付け加える。


「相手の身になって考えて、こうして貰えたら嬉しい。それを心がけているだけだから。特別なことは何ひとつないよ。
ただ、最近はちょっとした干渉を嫌う人もいるから、さじ加減が難しいけどね」


その答えがもう思いやりにあふれていて、わたしはすこし泣けてきた。


やっぱり大人なんだな、龍太さんは。わたしの困った質問にもこんなふうにちゃんと、しかもわたしに配慮して答えてくれるんだもの。


わたしったら、何を1人でもやもやした気持ちになっているの?


龍太さんはわたしのすぐ目の前にいて、わたしに優しさをくれている。


彼の過去に嫉妬したりしても、もう取り戻しようがない時間なのだから。過ぎた時よりも今やこれからを考えよう。


そうだ。龍太さんが傷ついているなら、少しはわたしが癒せないかと考えたんだっけ。


別にわたしを好きになってもらえなくてもいいから、龍太さんにたくさん楽しい思い出を作って欲しい。


良子さんのことを思い出せないくらい、たくさんたくさん。