龍太さんがわたしにくれたハーブの袋は、彼に似た香りがして落ち着いた。


わたしのとっさの嘘なのに、こんなふうに気遣われて良心が咎めた。

けど、それと同時に龍太さんの優しさに胸が温かくなる。


まだ会ったばかりなのに、龍太さんはわたしにも隔てなく優しくて。ちょっぴり幸せを感じると同時に、苦いものが喉をせり上がった。


もしかしなくても、龍太さんはわたし以外の人にもこんなに優しいんだろうか。


特に……良子さんには。


幸せと苦みが混ざり合って、わたしはハーブの袋を胸元でギュッと握りしめた。


「ありがとう……ございます。でも……」


わたしは大それた事だとわかっていても、思わず訊かずにはいられない。


「龍太さんは……誰にでも優しいんですか?」


ああ、なんて愚かな自分。口にして猛烈に後悔するなら、言わなければいいのに。


でも、自分でも止めるには難しい。龍太さんの優しさを感じるごとに良子さんの影がチラつく。


良子さんは友達としてずーっと彼の優しさを貰えてたのに、去年はそれを独り占めしてたんだ。


やっぱり、ずるい。


わたしはこんな小さな優しさでも幸せになれるのに……。
そこには、良子さんに嫉妬する醜いわたしがいた。