「そこから先は僕が自分で話します」
その声が聞こえてすぐ振り向き入り口を見たら、やっぱり龍太さんがお盆を持ち立っていた。
まさか会話を聞かれていたなんて思わなくて、わたしの額に冷や汗が流れる。
なんで勝手に話す?って詰ったり怒るかと思ったのに。龍太さんは何も言わずに、お茶をわたしの近くにも置いてくれた。
「多香子さん。申し訳ありませんが彼女と2人まで話がしたいので、よろしいですか?」
「ああ、ゆっくりお話なさい。どうせ午後は休診だから」
多香子さんはそう言ってお盆を手に持ち、処置室のドアを閉めていった。話が聞こえないように配慮してくれたのかな?
「これ、君が選んだ和菓子だよ」
龍太さんがお皿に載った和菓子をお茶の隣に置いてくれた。
艶のある小さなお皿に載った紫色の和菓子。わたしの好きなブルーベリーとレアチーズだ。
けど、どうやって食べよう。
いつもは遠慮なく手づかみで済ませてるけども、好きな人の前でそれはしたくない。
とは言っても、使えそうな道具は見当たらないし。
わたしが迷っていると、龍太さんはいきなり手づかみで和菓子を口に放り込んだ。



