赤い電車のあなたへ




「あの……わたしが龍太さんを初めて見たのはちょうど1年前。朝露駅のそばの踏切で、赤い電車に乗った彼を見かけたんです」


わたしが詳しい説明をすれば、多香子さんは顎に手を当てて不思議そうな顔をした。


「踏切で電車に乗った龍太を……ねえ? それじゃあ一瞬しか見れなかったんじゃない?」


多香子さんの言うとおり、一瞬も一瞬。恐らくはほんの5秒足らずだったと思う。


でも、それでもわたしは。彼、龍太さんを……。


わたしが俯いて視線を落とせば、それで察したらしい多香子さんがズバッと断言する。


「あ~! わかった。一目惚れってヤツね」


ビクッと体を震わせてしまって、目を泳がせてしまったわたし。とってもバレバレで分かりやすい。


「図星ね!」


ケタケタと楽しそうに笑う多香子さん。流石に女性としても人生の先輩だ。


「その分じゃずーっと龍太の事を捜して来たでしょ?
いいわ。私の知る限り龍太の事を教えたげる。あいつからはたぶん言いにくいだろうから」


多香子さんがそう話してくれて、いよいよ彼の事が知れるとゴクリと喉を鳴らした。