龍太さんにお茶菓子を選ぼう、と言われたわたしは、頭がぼうっとしてうまく働かない。
「は、はいっ! 一生懸命選ばせてもらいます!」
何を言って良いのやら、ただ思い浮かんだ言葉を口にしただけ。だから意味不明なことを言って恥ずかしくなり、うつむいた。
けど、クスッと小さく龍太さんが笑って。その笑顔を目にしたわたしは、たちまち彼に意識を奪われた。
去年に朝露で見た笑顔より控えめだけど、確かに龍太さんが笑ってる。
なんだか全身が包まれたような暖かさを感じて、わたしの胸が心地よい音を奏でる。
「それじゃあ、僕も一生懸命に選ばせてもらうかな」
わたしの言葉を混ぜっ返してから、龍太さんは唐突にわたしの脇に手を差し入れたから、驚いて彼を見上げた。
「和菓子選ぶのに1人じゃ歩けないだろ? だから杖代わりに僕を使うといい」
「あ……ありがとうございます」
わたしはふわふわした気持ちで、なんとかお礼だけは龍太さんに言えた。
「どういたしまして」
龍太さんは笑んだまま、嫌な顔ひとつせずわたしをお店まで支えてくれた。



