赤い電車のあなたへ




どうしよう。こんな足で今から1時間歩かなきゃならないのかな。


でも、わたしにはそれしかない。


「すいません、正直あてはありません。なので自分で何とか歩きます。駅に戻れば誰かいるかもしれませんし」


別にヤケになった訳じゃなくて、それしか手段がないと理解した上で言った。けど、松田先生はそりゃあいかんよ。と宥めてきた。


「そんな足で歩くなど無茶しなさんな。うちの若いのを呼ぶから、背負ってもらいなさい」


「え、あの……松田先生!」


わたしが止めようとする前に、松田先生は電話を借りてどこかに連絡してた。


「ああ、患者さんで足挫いて帰れんだわ。りゅうがおるなら和菓子屋に寄越しとくれ」


りゅうがさんって変わった名前だなあ、なんてぼんやり考えた。


「もうすぐりゅうが来るから、したら送らせるでな」


「はい、ありがとうございます」


りゅうがさんってどんな人かな? やっぱり看護師さん? と想像してたわたしだけど。


「こんにちは、松田先生。お呼びですか?」


低くて心地よい声が和菓子屋さんの入り口から聞こえて、わたしは何気なく振り向いたのだけど


すぐに、自分の目を疑った。


だって……


そこにいたのは。




「緑川 龍太。わしの助手じゃ」


松田先生の声が、ずしんとわたしの胸に響いた。