丘陵地は「星の丘」と呼ばれていて、一説には天から龍が落ちて三日湖を作った時にできたとか。


星の丘にゆくまでの道のりは割と平坦で、展望台に着くまで周りの緑豊かな景観を楽しめた。


ただ、気になったのは。ほたるがだんまりだったこと。


わたしがいくら話しかけても、生返事が返ってくるばかりで。なんだか元気がないようにも見えた。


展望台に着くと、眼下に広がる三日湖の湖面がキラキラと輝き、遠く残雪を頂く日本アルプスまで見えて感激した。


緑豊かな周囲の自然と、時々見える野生生物。澄み切った青空の下、風の薫りも心地いい。


「ほたる、見てみなよ! きれいな景色だよ」


親友の気分を朗らかにさせたくて、わたしは指差してみせた。


「ほら、あっちにいるのシカじゃない? わたし、野生のシカを見るの初めてなんだ」


わたしがはしゃいでると、ほたるは顔を上げて違う方を見た。それは元来た道、駅の方へ。


「鞠、あたしさ。やっぱり夏樹を待ちたい」


ほたるがそう言い出すのを、わたしは薄々感づいていたのかもしれない。恋人としては当然だと思う。