赤い電車のあなたへ




わたしは実際に襖を開けて部屋から外に足を踏み出した。


でも……。


それで、いいの?わたしのなかのわたしが問いかけてきた。


“また、逃げるの?”って。


そして、わたしはハッと気づいた。


わたしはお母さんのもとから逃げて朝露にやって来た。


電車の人はきっかけではあったけれど、そうでなくてもきっとわたしは朝露に来てた。


わたしは逃げたんだ。
現実に立ち向かう勇気がなくって。


逃げ込んだこの朝露で、また逃げ出してどうするの?


もう、逃げ込む場所なんてない。


嫌だから辛いから怖いから苦しいから、だから逃げるの?


わたしは今までずっとずーっとそうしてきた。逃げて逃げて関係ないと閉じこもったしまえばラクだったし、何もかも見過ごせた。


なら、夏樹からも逃げるの?


あれだけたくさん妹のように可愛がってもらってきたのに、夏樹をないものと無視出来るの?と自分に問いかける。


そんな事、出来やしない。


わたしは夏樹が、大好きだもの。


お兄ちゃんみたいで優しい夏樹。わたしを一番に考えて何にも一生懸命になってくれる夏樹。