赤い電車のあなたへ




夏樹の部屋に取り残されたわたしは、どうしていいかわからない。


“今までの全てを壊すつもりなら、従兄妹という枠を越えるつもりならここにいろ”


夏樹は確かにそう言った。


今までの全てを壊すって……。


わたし自身の事なの?それとも、夏樹とわたしの間のことなのかな?


従兄妹を越える、という意味が一番わからない。


わたしと夏樹は血が繋がったいとこで幼なじみ。それは誰にも変えようがない事実なのだけれど、それを越えて何かが起きるという事なの?


それを考えた時、わたしの体がぶるりと震えた。


……怖い。


今までの安寧が変わってしまう“何か”。それは未熟なわたしにも直感的にわかった。


それを受け入れてしまえば、今までのわたしたちとは違うことになるのだと。


夏樹がどうして怒るのか、は根本的な部分で理解出来ていない。


けれども。このまま夏樹の部屋にいたら、きっと決定的な事が起きてしまう。


逃げようか、とわたしは立ち上がって襖に手をかけた。