赤い電車のあなたへ




「だからっ……」


夏樹はわたしと向かい合い、どうしてか顔を赤くして、すぐさま体の向きを変える。


「夏樹?」


わたしがよく解らなくて体を寄せようとすると、夏樹は早口で言葉を投げつけてきた。


「……そんなふうに見えるシャツとか……脚が見えるズボンとか着るなよ!」


見えるシャツ? と首をひねり、わたしはTシャツを見て襟ぐりを引っ張った。


いったい何が見えるの?夏樹は肌のことを言ってるのかな?


「……茶、飲んでくる!」


唐突に夏樹が立ち上がり、ぶっきらぼうに言い出した。
そりゃあ夏のお風呂上がりだし、喉も渇くよねとわたしは納得して頷く。


「おまえ、もう部屋に帰れよ」


「えっ」


やっぱり不機嫌なまま、夏樹はそんなふうに言う。わたしを部屋から追い出したがってる?


夏樹が今までそんな態度をしたことがないだけに、わたしは軽いショックを受けた。


「どうして? 部屋にいちゃいけないの?」


わたしは悲しくなり、じんわりと涙を浮かべながら夏樹を見上げた。



すると夏樹はわたしから顔を逸らして声を張り上げた。


「帰れよ! でないと俺は……」