赤い電車のあなたへ




わたしはない勇気をさらにかき集め、夏樹に体を寄せて顔をのぞき込んだ。


「夏樹、なにがいけないの?わたし……ちゃんとするから」


顔を背けられないようにできるだけ顔を近づけてみたら、体が前かがみになってバランスを崩し、そのまま畳に手を着いた。


「…………」


なぜか夏樹は眉間にシワを寄せてますます不機嫌な顔になる。


「ねえ、夏樹」


なんだか泣きたくなりながら、わたしはぐっと我慢して夏樹を見上げた。


「き……嫌いになったの? わたし……を」


わたしは堪えきれなくてぽろりと涙を流してしまい、慌ててそれを指で拭う。


すると。


「……違う!」


夏樹は苛立った声で乱暴に言った。


そしていきなりわたしの手首を掴むと、それを引き寄せて空いた手を肩に回す。


え、と思う間に。わたしは夏樹の胸に寄りかかる格好になった。


「……わざと……してんのかよ、鞠……」


夏樹の言ってる意味がわからない。けども、どこか切羽詰まって余裕がない夏樹の声は初めてだった。