赤い電車のあなたへ




夏樹の部屋はわたしの隣あわせになってる。だから、部屋に向かうと言っても数歩歩くだけ。

清川家は全て和室だから、ノックは必要ない。


「夏樹……起きてる?」


あんなに機嫌が悪いいとこを見たのは久しぶりだから、わたしはふすま越しに小さく声をかけた。


しばらく経っても返事はない。ふて寝でもしたのかな?


あれ、でも。よくよく耳を澄ませば、小さな音がする。


カリカリって、何か書いてるみたい。夏休みの課題か勉強中かな?


どうしよう?


夏樹の不機嫌は怖いけど、このまんまここに居ても仕方ない。わたしは怒られるのを覚悟でふすまの縁を持ち、エイヤッ! と開いた。


夏樹がハッとした顔で振り向くけど、勉強机に向かう彼が手にしているのはボールペンだった。


ん? シャーペンじゃないなら勉強とか課題じゃない?なんて興味を持ったけど、夏樹が急いでノートを閉じたから、探れなかった。


案の定夏樹はわたしを見た途端に、めちゃくちゃ不機嫌になった。


おまけにフイッと顔を逸らしたから、わたしはすこしショックを受けた。