赤い電車のあなたへ



けども夏樹はむっつり黙り込んだまま、わたしを見ようともしない。自分の食器を洗い流して、足早に出ていこうとする。


え、え?


わたしは意味がわからなくて、慌てて声をかけた。


「夏樹、どうかしたの? わたし……変なことを言った?」


「……別に。何もない!」


そう答えたくせに、夏樹の足取りはあからさまに乱暴で。木造の廊下がギシギシ軋み、いつ踏み抜くか心配になるくらいだった。


「……叔父さん、夏樹どうかしたんですか?」


わたしは気になって、はす向かいにいる叔父さんに訊いてみた。もしかしたら親子喧嘩でもしたのかな? って。


「さあ……別にケンカなんかしてないけどな。
ただ、機嫌が悪くなったのは鞠ちゃんたちの旅行を聞いてから。
あからさまに悪くなったのは、鞠ちゃんたちの旅行に男性が混じるって聞いてからだな。
あいつには珍しく、どうもイライラして落ち着きがなくなってきてる」


叔父さんの話に、もしかしたら夏樹は旅行に反対だったのかって気がした。