赤い電車のあなたへ



「うちに泊まったよ」


メインストリートからすこし外れた小さな民宿で、女将さんが教えてくれた。


「若い男女のカップルは珍しかないけどさ。かなり長く連泊したから覚えてるよ。半月くらいいたからね。この土地にはそんなに長く滞在する位の娯楽もないのにねえ」


「あの、その時の宿帳って見せて頂けますか?」


龍治さんがあらかじめ事情を話してきちんと身分を明かしたからか、女将さんは協力的だった。


「そうさね、いいよ。 一年も探してきたなら、協力しないわけにもいかないからね」


女将さんは快く宿帳の開示に同意してくれた。


そしてしばらく宿帳を辿った龍治さんは、「名前があったよ」とわたしを手招きした。


「ほら、去年の7月22日から8月5日まで泊まってる。やっぱり良子と一緒だ」


良子さんという女性と一緒、という現実に胸が騒いだ。


いったい誰なんだろう?龍太さんとどんな仲なのかな。


「それで、龍太は何か話してませんでしたか?」


龍治さんがあちこちの従業員に訊き回ると、意外な地名が出てきた。


「そういえば、三日湖のことを詳しくわたしに訊いてきましたよ」