「実は……龍太が一年前から行方不明なんだ」


「え……?」


龍治さんがそんな意外なことを教えてくれたから、わたしの顔はポカンとなってた。


なんとも間抜けな話だけど、どうして龍治さんが龍太さんの絵に過剰に反応したのか、その原因がやっと解った。


両手を胸で組み合わせたわたしは、背が高い龍治さんの顔を見上げて首を傾げてみせると。彼はゴホンとせき払いをして、向こうの山々へ目を向けた。


「……龍太はな、幼なじみでいとこ。俺の母親と龍太の母親が姉妹なんだ。
俺の父さんは龍太郎祖父ちゃんと幼くして別たれたけども、祖父ちゃんの土いじりに影響されて、地質を扱う分野で働いてるんだ。
それに感化された俺は化石に興味を持って、ガキの頃はよく龍太と化石の発掘ごっこして遊んだもんだよ。
幼なじみの俺と龍太は年が同じだし、実の兄弟みたいだってよく言われてたよ」


でも、と龍治さんは言葉を切ってため息を着いた。


「俺も龍治も同じ大学の化石研究サークルに所属して……一緒にいろんな場所の発掘作業を手伝ってたりしたんだけどさ。
あいつ、去年に突然失踪したんだ。
“龍ヶ縁にいく”ってメモだけ残してな。
それ以来何の音沙汰もないから、安否が気になって警察にも届けていたんだ」