「それでね、今度その友達が大会のメンバーに選ばれそうなんです!」


『あぁ!あの鼻血だして倒れたダチか。』


「そう!ちーちゃんって呼んでるんだけど、陸上部でね、一年生の中で一番速いんですよ!」


『マジかよ。選ばれるといいな?それにしても………ククッ。あの鼻血の件はマジ笑えた、ハハッ』


「なっ!!元はと言えば霧島くんが悪いんでしょ!?それでちーちゃんが変に勘違いして…!」


『さぁ?どうだったっけ?』


「霧島くん!!」


『ハハハッ!だって咲希の反応がウケるんだもん。しかたねぇじゃん。』





夜、私達はたわいもない話をしていた。



友達のこと。


バイトのこと。


学校でのこと。



そんな日常の会話をやりとりしていた。



あ!そうだ!!



私、ずっと霧島くんに訊きたいことがあったんだった!



「霧島くん、そういえば部活って何入ってたの??」


『……え!?部活??俺、なんも入ってないけど?』



あ、あれ??



「で、でも、前に “クラブ” 行く行かないで揉めてませんでしたっけ!?それで何のクラブやってたのかな?って。」


『クラブ??……………あぁ!なんだ、そういうことか! “クラブ” が “部活” にね~………ブハッ!』


「え?ちょ、ちょっと?霧島くん?!」


『アハハハハハッ!!!』



え!?


ちょっと何事!!?



よくわからなくて、頭の中が疑問符でいっぱい……。


『そっか。ピュアな咲希にはわかんなかったか。クラブっていうのは、未成年が出入りできない場所で……ナイトクラブ?みたいな所だな。』


「え!!?ナイトクラブ!!??」



それって……


お酒とか飲むところ?!




ということは……。


「もしかして霧島くん、そこに出入りしてたの……?!」


『まぁな。……今は行ってないけど、昔は年齢を偽って、よくダチとかと連れて飲みに行ったり、オンナひっかけたり、喧嘩したり、色々やってたな。ある店とか賭博場だったりして……!あん時はマジ焦ったよ。』



さ、さすが……といいますか。



なんといいますか……。



すごい経歴の持ち主なんだなと驚きを超えて呆然としてしまった……!



『俺のこと、軽蔑しちまったか?』


ハッ!!



意識が何処かへとんでたよ!!



「う、ううん!ただビックリしちゃって……!!私の周りではそんな話は聞かないから。」


感じたままを正直に話してみた。


『そっか。でも、ちょっと俺のこと嫌にならなかったか?』


「え?どうして??」


『だって……普通ひかねぇか?こんな話……。女子なら嫌だろ。』


「でもその話って過去のことでしょう?」


『え………?』


「過去がどうであれ、私が知ってる “今の霧島くん” が、霧島くんだと思うから……。だから驚くことは確かにあるけど、軽蔑なんてしないよ!」



これは本当だよ?


過去に何があっても、今の霧島くんが大切なんだから。




『…………咲希。』


「は、はい!なんでしょうか?」


『…………ありがと。』


「え…!?な、なんで!??」


『なんでも。ありがとな。……………俺、咲希と出逢えて良かったよ?』


「っ!!!」



思いがけない言葉に息が止まりそうになる!!



「どどどどうしたんですか?!!きゅ、急に!!!」


『ん?いや、本当に。そう思った。心の底から。』




霧島くん……。




それは私もだよ?




そう言いたいのに、なかなか声が出ない!



好きな人に自分の気持ちをうちあけるのって、結構勇気がいるんだな!!




『……咲希。いつか俺が咲希に、 “咲希は俺が護るから。” って言ったこと、覚えてるか?』



え……?




確かそれって……!




そう。


その言葉をくれたのは私が霧島くんに嫌われたと勘違いして、泣いてしまった時、
彼が必死に私を落ち着かせるためにかけてくれた言葉だった!



『あの約束、ちゃんと守るから。俺、何があろうと咲希を護る!例え、どんな形であれ…。』


「え?…かたち??」



なんだろ…?



今の言葉、ちょっと引っかかったな……。



『だから…………………明日、放課後。中庭で待ってる。咲希に…………話がある。』



は、はなし!??



私に!?




な、なんだろう!?



「わ、わかりました!!行きますっ!」


『………………。』



あ、あれ…?霧島くんが反応しなくなっちゃった!




「霧島くん?」


『……俺。マジで咲希に出逢えたことが、今まで生きてきた中で……一番、幸せだった。』



え!!?



「そそそんな!お、恐れ多いです!!で、でも私も、その、きききき霧島くんと会えたこと、凄く嬉しいです!!」



恥ずかしいけど、勢いでそんなことを言ってしまった!!



『………そっか。ありがとな。っその言葉を聴けただけで、充分幸せ者だな!俺はッ!』



霧島くん?



『じゃあ、もう遅ぇから、そろそろ切るか…。』


…あ、本当だ!!



もう0時過ぎてる!!!



「また明日会いましょうね!今日みたいにまたいっぱい話しましょう!!あ!霧島くんの話が終わった後、その、な、中庭とかで…ふ、ふ、二人とかで!」


『…………そうだな。また、明日な?………おやすみ。咲希…。』


「はい!おやすみなさい!」




ピッ。




はあぁぁ~!!



緊張したあぁ!!



でも、凄く話せて凄く嬉しかったな……。



まるで夢みたいだな……。



好きな人とこんなにも話せるなんて…!






でも、私は知らなかった。


今日のことも含めて今までのことが全部、


夢のようになってしまうなんて……。