洗濯物をたたんでひと息ついていると、雨が降り出してきた……。


今日、あんなにいい天気だったのに、結局降ってきちゃったか…。


窓の外を眺めていると急に雨足が強まり、雨が窓に打ちつけて流れていく。


そんな中ふと思い出すのは、今日ずっと一緒にいたあの人のこと。



霧島くん……。



あれから無事に帰れたかな?


心配だな。


再び窓の外に視線を向ける。


しかし雨に遮られて外の様子は見えない。


そしてフワッと香ってきた彼の香水の匂いが、先ほどまでの会話を思い出させてくれる。







「え!?家って隣の市(まち)なの!?」


「まぁな。でもバイト先はさっきの駅の近く。そこにバイク止めてあるから、それに乗って帰ればいいだけなんだけどな。」


「でもそれならそうと初めから言ってくれれば良かったのに…。てっきり私と帰る方向が一緒だとばっかり……。」


バスを降りると、自宅近くまで霧島くんと一緒に夜道を歩いていた。


だから私の家の近くに住んでるとばっかり思っていた……。


迂闊だったよ…!


これじゃ霧島くんに家まで送らせた事になっちゃうじゃん!!



するとそんな私を横目で見ると、


「まぁ、咲希がそういう反応すると思ってたから、わざと黙ってたんだけどな?」


え?そういう反応って?


「俺にそうやって気ぃつかうだろ?で、生真面目だから俺に送らせず、『大変だし、一人で平気』みたいなこと言うと思って。」



うっ…。




正解…。



「でも!これからまた戻るんですよね?やっぱり大変じゃないですか!」


「苦なんかじゃねぇよ、こんなの。それに、女の夜の一人歩きは危ねえし。男が女を送んのは当たり前。」



そ、そういうものなのか…!



霧島くんって紳士なんだな~!


また新たな彼の一面を知ったとき、今日会う前から気になっていたことをふと思い出した。



「あ!そういえば霧島くんってバイト何やってるんですか?」


コンビニとかかな?


でもレジ打ちの霧島くんなんて想像つかないけど。


ちょっと失礼かもしれないけどそんな光景を想像してしまい、クスリと笑ってしまった。



「バイト?ホストだけど。」



………へ???



「ぽすと???」



それを聞いた霧島くんが急に笑い出してしまい、私はわけがわからない事態にっ!!



「ブァハハハハ!!どうしてそうハズしてくるわけっ!?クククッ。……ホストだよ、ホスト!」




……………。





………………え。





「え”!!!ホ、ホストクラブ!!??」




ウソッ!!




ま、まさか霧島くんのバイト先がホストクラブだったなんて!!



しょ、衝撃………。




普段あんなに女の子に冷たい態度をとってるのに、ホストのバイトをやってるなんて……。



なんだろう…。



ちょっと……ショック…………。



霧島くんがどんなバイトをやろうとそれは私には関係のないことだし、
それは霧島くんの自由だから私がとやかく言えないのはわかってるけど……、



でも………




ちょっと…嫌かも…。




すると。




「そんなに嫌?俺がホストやってんの。」


「え…?」


いつの間にか感情が顔に出てたみたいで、
霧島くんが柔らかな微笑みで訊いてくる!



「い、いえ!その、ちょっと驚いただけです……。」



本当の気持ちを言えず、彼から目を逸らしてしまった。


だって、別に私がそれをどうこう言う資格なんてないし。



友達だから。


私と、霧島くんは…。




そう考えて顔を伏せていると、温かい両手が私の冷たい頬を包む!!



えっ!!!



な、なにごと!!?



霧島くんの両手が私の頬を優しく包み、伏せていた顔を上に向かせると、
彼の額が私の額に触れた!!



そして数センチ先に、霧島くんのあの整ったお顔がぁっ!!!!!



「辞めてほしい…?ホスト。」



ひいぃ!!



ちちちちかすぎるっ!!!



こんな距離でしゃべれるわけないでしょっ!!!



「他の女と仲良くしてほしくない?」


「そ………それはっ…………。」



そ、そんなのこんな状態で訊かないでよおおぉぉ!!!


言葉が出てこないし、オデコも頬っぺたも熱くて!!



「咲希は、俺のこと…独り占めしたい?」


「あの………そんな……ことは………、」


「ウソつき。」





チュッ。





「ひゃあっ!!!」




霧島くんが、私のオデコにまたキスを~~~~!!!



今日の霧島くんのキス攻撃を幾度となく受けてる私…。


だけどそれは決して慣れることはなく、
どんどん熱が上がる一方だった……。