外に出ると少し肌寒かった。



私と霧島くんは広場をあてもなく歩いてゆく……。


というか、霧島くんがグングン進んでいくので、私がそれにやや引っ張られている……といった感じで。



手を繋いでるので霧島くんについて行くしかないんだけど……。





歩いて約10分。



無言の状態が続いている……。


「き、霧島くん!て、天気晴れて良かったよね!」


「ん……。」


「もう季節も夏ですよね。」


「そうだな…。」


「えっと………あの…………。」


「…………。」



ど、どうしちゃったんだろ、霧島くん…。



図書館の時はあんなに話してたのに。



原因を色々考えていくうちに、ふとある考えに行きつく。




もしかして……、




私、気がつかないうちに霧島くんに何か嫌な思いをさせちゃったのかもしれない…。


そう思った時、さっき霧島くんのファンの子達に言われた言葉が、
私の頭の中で無意識のうちに響き渡ってくる!





『すっっごく地味だしっ!!霧島くんと全然釣り合わない!』


『あなたみたいなブスが霧島くんと仲良くしていいわけっ!?』


『この地味女!!!』





ドクンッ!!





心臓が嫌な音をたてる!



『地味。』



『釣り合わない。』




この言葉が心に引っかかってしまった……。



そして憶測にすぎないけど、私なりのある答えに辿り着く。




もしかしたら霧島くん………、




私と一緒にいることが、 “恥ずかしくなった” のかもしれないっ!!



地味な私を連れていることを、疎ましく思ってきちゃったのかもしれない!!




だからもう話す気も無くて……。




顔もこっちを見てくれなくて……。




それで……………!




私といるのが嫌になっちゃったのかもしれない……!!!




「ーーっ!」





霧島くんに嫌われた。



そう思った瞬間、
熱いものがこみ上げてくるのと同時に、私の目から大粒の涙がこぼれてしまった!




脚も自然と止まる……。




歩くのをやめた私に気がついたのか、
霧島くんも歩みを止めて、こちらを振り返った。




そしてピタッと動きが止まった!!




「っっつ!!!!さ、咲希!!??ど、ど、どうしたっっ!!?」




涙で彼の表情はよくわからないけど、
ひどく慌てている様子で、私との手は繋いだまま、


彼の大きな身体が私の目の前で屈まれて、


そしてとても心配そうな様子で私を見てくる。




「き……きり……しまく……っ…。グスッ。ご…こめん…な……さ……っ…!」




溢れた涙をもう止めることができなくて、
でも私はどうしても霧島くんには謝りたくて、
声にはならない声で謝った……。



そんな私に霧島くんは動揺を隠しきれないみたいで……、


「え!!??なッ!!!ど、どうしたんだ、イキナリ!!??べ、べつに咲希は、謝ることなんて何もしてねぇぞっ!???」


と、完全にパニックになっていた…!!



そして、もう一言。



私には言いたかったことがあった。




「きっ……きらいに……な……ならないで………くださ…ぃ……。うっ……グスッ。」




こんなこと言うなんてウザイと思われても仕方ない!



でも、私は言いたかった…。



本当に心の底から想ってることだから、彼に伝えたかった…。



これで完全に嫌われてもいい!だけどその前に、どうしても言いたかったんだ…。




前にヤスさんが私に言ってくれた言葉がある。




『何でも言ってみるといいよ?理人には。』


『大丈夫だよ、理人は。鳴瀬さんを傷つけることは絶対しない。』


『友達には熱いやつだから。』




本当にそうだね、ヤスさん……。



霧島くんは何でも温かく受け止めてくれて。



私をいつも助けてくれて。



そしてすごく友達思いで。





でも…………!



そんな彼と、もう一緒にいられなくなってしまうのかもしれない!!!



伝えたけど、もうどうにもならない事なのかもしれない!!!



そう考えたら、涙はおさまるどころか頬を伝ってはポタリと地面に落ちる……。



泣きたくなかったのに…!



困らせたくなかったのに…!



私…霧島くんに疎ましく思われても仕方ないのかもっ!!!!






だけど、それは突然だった。




「……っ!!!」




心臓が止まるんじゃないかと思った……。



「嫌いになんてなるわけねぇだろ!? 俺は、こんなにも咲希のことが好きでしょうがねえんだから!!」



彼に力強く全身で抱きしめられていたから……!