「唯ちゃん、大丈夫!?貸し出しカードあった?」


受付のカウンターへいくと、色んな場所を探したのか、物が散らかっていた。


「うん、あったよ!昨日しまう場所を間違えちゃったみたい…!」


エヘヘ。と頬を染めて笑っていた。


「そっか、良かった~。」


ホッとしていると、

唯ちゃんが “ちょっと咲希ちゃん!” と、
カウンターの下にしゃがんで私に手招きをする。



ん?



どうしたんだろ?



私も真似て唯ちゃんの隣にしゃがんだ。


「どうしたの?唯ちゃん。」


すると唯ちゃんのテンションが急にあがって、
小声だけどすごい勢いで話し出してきた!!


「咲希ちゃん!!!さっきの霧島くんの咲希ちゃんへの態度見たぁ~~!??もう~~咲希ちゃんへの想いが溢れ出て暴走しちゃってたじゃない!きゃあ~~!!それに間近であんなに照れた霧島くん見たの初めてだったな~!!」



暴走?



確かに暴走しそうになったけど、

それはあくまでも准平くんに対してだよね?


「そうだね、殴り合いの喧嘩にならなくて良かったよね!」


「………え!??」


私の答えが的を射てなかったのか、唯ちゃんが狐につつままれたような顔になる!


「……さ、咲希ちゃん…もしかして霧島くんの咲希ちゃんへのアピール……わからなかったの!?」


唯ちゃんは驚きを隠しきれない様子…。


「え!?アピール!?霧島くんが何かアピールしてたの?!!し、知らなかったなぁー…。」



“うーーーん”と唸っていると、



「そうだよ!霧島くんの想いのこもった言葉を一心に受けてたのは咲希ちゃんなのに~~~!!!はぁ…。なんで気づかないの…?」


と、唯ちゃんがしょぼーんとうな垂れてしまった。



「うーーーーーん」



何だろ?


アピール??


霧島くんは何をアピールしたかったんだろ?!



アピール……。



でもそれって本当なのかな?



もし本当なら、霧島くんってけっこうサバサバしてるから、直接言葉で言ってそうだけどな~……。



う~ん……わからないな~。



すると唯ちゃんが悔しそうに言ってきた!


「霧島くんの咲希ちゃんを想う気持ちがひしひしと私には伝わってきたのに~~!!じれったいよ~~!」



想う気持ちか……。




あ!!



そこで私はピンときたっ!


「それなら私も霧島くんに対して思ってたことがあるよ!霧島くんはとても気遣いができる人だって!!」



「へっ??!」



唯ちゃんらしからぬ声がとんできた!



「霧島くんと私じゃ住む世界が違うのに、一般人の私に対しても優しく接してくれてさ!何度か助けてもらったし、本当に“人”としてとっても魅力のある人だなって思うもん…!」


私の、霧島くんに対する“想う気持ち”を述べた!!


「さ、咲希…ちゃん……。それ、本気で言ってるの……?」


唯ちゃんが少し引きつった顔で、訊いてきた。


「うん!!だから霧島くんが不良の仲間や先輩、あとファンの人みんなから愛されてるんだな~って今ではすごく納得できるよ!!准平くんだって、さっきの霧島くんの対応を見て感激してたし!私も感激しちゃった!」


「……千枝ちゃんの言ってたこと、本当だったんだ………。まさかこんなに鈍感だったなんて……」


そう呟いて唯ちゃんがガクーー……と、うな垂れてしまった!


「え!??ど、どうしたの!?私なにか変なこと言っちゃったかな!?」


いい話をしたと思ったんだけどな~。


すると唯ちゃんが今度は何やら考え込んで、ブツブツと呟きはじめた。


「このケースは第三者が何を言っても通じないだろうし…。恋愛は理屈じゃないもんね。……こうなったら本格的に霧島くんにオトしてもらうしか方法はないかな……?」


「え???」


唯ちゃんの声が小さくてよく聞き取れない!


ん~、いったい何を考えてるんだろう??



…………。




…………………って!!!!



こんなことしてる場合じゃないじゃん!!



私、霧島くん一人に窓拭きやらせちゃってる!!!


「唯ちゃん!私、掃除を霧島くんに頼みっぱなしだから、手伝いに行ってくるねっ!また後で話そ!」


「え!?霧島くんが掃除!?どうして霧島くんが!?」



私は立ち上がって急いで霧島くんを探しに行った!