コイツ!!俺のこと何も知らねぇくせにっ!!!

俺はオッサンの目の前まで一気に駆け下りると、
握りこぶしをつくってオッサンめがけて顔面に放った!!


「ーーー!!!」


だけど、その寸前でピタリと止まる。

俺は動けなくなってしまった!


コイツ……!


「どうしたんだ?殴らないのかい?」

「…………なんでよけねぇんだよ?」

そう。
コイツは俺の拳を待ってたかのように、全く動かなかった!

それに殴ろうとした時のコイツの眼……!

一瞬スゲー寒気がした…。

なんか、殴ったら危ねえような気がして……。

「君はさっきのチンピラとは違うと思ったからさ。」

「は……?」

「眼がまだ生きている。見ればわかるよ。」

「…………。」

「さてと、じゃあ私は行こうかな?」

「…………。」

「君も早く帰りなさい。」

そう言ってオッサンは俺に背を向けて歩き出した。


……………。


……………まさか!!


そこで俺はハッとした!


まさかとは思うけど、コイツ!
俺を試しやがったな?!!


その背中を見ていると、
「あ!そうそう。」
と言って、鞄から何かを取り出した!

「コレ。君にあげるよ。よかったら食べなさい。」

渡してきたのは、一つのあんぱんだった……。


なんで俺に……。


「こしあんを買ったと思ったのに、粒あんだったからね。君にあげるよ。賞味期限は今日までだから早く食べるんだよ?」

「なっ!!俺は物乞いなんかしてねぇよ!!」

「食べてないように見える。顔の血色があまり良くないからね。」


マジかよ……。


「それと、さっき助けてくれたお礼だ。ありがとう。」

「…………仕方ねぇな。次は間違うなよな、オッサン。」

「あはは。そうだね。気をつけるよ。」


そう言って、今度こそ俺の前から消えた。


なんだったんだ?!あのオッサン………。

わけわかんねぇ。

しばらく俺は、その場で佇んでいた。