「はぁ、はぁ、はぁ。」


私は急いで体育館裏へ直行していた!



校舎から離れている体育館。


そこへ笹原さん絡みで行くのもこれで二度目だ。


一度目は忘れもしない、あの出来事……。






『あの鳴瀬っていう女が理人の “オンナ” なんでしょ!?そうなんでしょっ!!?』


笹原さん達が私のことを悪く言ってたとき、



『っるせえええぇ!!!!!』



『咲希のことをそれ以上悪く言うなら許さねぇッ!!』



霧島くんが、必死に庇ってくれたんだよね。





あの時のことを思い出すと、今でも胸が締めつけられる。


その後、私は初めて霧島くんに対して自分の気持ちに気づいたんだよね……。





好きなんだって…。




甘く切ない思いを秘めて体育館に着くと、
その裏へとまわった。


角を曲がろうとしたその時!





ガッ






ズザァァー!!






「痛ッ!!」



私は何かにつまづいて思いっきり転んでしまった!




すると!





「あれぇ?やっぱり来ちゃったんだぁ?鳴瀬さん?」



その声は……!!



甘い声が上から降ってきて、顔を見ずともわかった!



「さ…笹原さ……ッ!!」



立ち上がろうとした時、右膝を思いっきり打ってしまい、
その痛みに立てなくなってしまった…!!



「うっそぉ?!そんなに痛かったぁ?里菜そんなに足出してなかったけどぉ??」





!!!





「里菜のせいじゃないよ!コイツが勢い良すぎたんだって!!」


「アハハ!言えてる~!」


「タダの自爆でしょっ?」



そっか…。


さっきつまづいたのは笹原さんの足だったんだ!


それと今日は仲間もいる……ってことか。


「足を…ひっかけたんでしょ…?相変わらず……卑怯だね。」


全身を強く打った直後だから、すぐに声を出すのも苦痛だった。


「はぁ!?卑怯!??鳴瀬てめぇいい加減に、」


「ちょっとぉ~。まだ怪我させるのは早いよ?これから里菜が話あるんだからさぁ?」


と、笹原さんが仲間の女の子達を制する!




話……?





「ッ……わ、私もあなたに話が……あります!っどうして!!……私の親友に、嫌がらせなんかしたんですかっ!!!!」


怪我した足を庇いながら、やっとの思いで立つと、
出ない声を無理やり吐き出した!!


「えぇ?なんのことか里菜わかんなぁ…」


「っ!!とぼけないで!!!!」


「ーー!?」


「笹原さんが二ノ宮さんに…ちーちゃんに、やってもいない事をなすりつけたんでしょう!!?そうでしょう!!!?」


「…………。」


「今さら……、ッ!今さら言い訳なんて見苦しいことはしないでよ!!!」


悔しさで私は涙目になってきた。



「どうしてこんな……!こんな事を!!」



私の大事な親友。


今まで支えてくれた親友を!



この人は!!


すると黙っていた笹原さんが冷たい声で囁いた。



「今さら何を言ってんのよ?」



え……。


そこには、私が今まで見たことがない笹原さんの冷徹な顔があった!



鋭い目でこっちにジリジリと近づいてくる!!




ドクンッ





心臓が嫌な音をたてる!


そして笹原さんは私の胸ぐらをつかんで持ち上げてくると、
さも当然のごとく私に言い放った!



「アンタが条件飲まなかったからでしょ…?」