アハハハハハハ




休み時間、教室には笑い声が響いていた。


「ちーちゃん……笑いすぎだよ。」


さっきからずっと笑い声が絶えないちーちゃん。


私は酸欠にならないか心配になってきた。


「だ、だ、だって!クククッ。さ、咲希、鈍感すぎ……アハハハハ!!」



もう!


さっきからこんな調子だから話が進まないよ。



はぁ~。とため息をついて、
お腹をかかえて笑ってるちーちゃんを見ていた。


「どうしたの、千枝ちゃん!?笑い声が廊下まで響いてるけど。」


唯ちゃんが驚いて、来てくれたみたい!


「唯ちゃん。それは私が原因なの。ちーちゃんに朝の事件を見られてて。それでコトの成り行きを話したら、こんな事に…。」


「え!?事件!?咲希ちゃん、事件にあったの!??だ、大丈夫!?もしかして怪我してるんじゃない!?保健室に行かなきゃっ。」



アハハハハハハ



ちーちゃんの笑いがヒートアップする。


「いや、事件というか、物の例えで!だから怪我とかしてないよ!」


「なぁんだ、よかった!…でも事件ってなに?何かあったの??」



それは……。



と、今までの事をちーちゃん同様に話していく。





先日の購買へ行ったときに、不良たちに絡まれたこと。


図書室の前で偶然、霧島理人の話を盗み聞きしてしまったこと。


そして今朝、またその不良たちに絡まれたこと。


で、その不良の人達が上級生だと勘違いしてたこと。


それを順々に、でも霧島理人の別れ話の内容はふせて唯ちゃんに話した。



「そうだったんだ。な、なんか凄いことになってたんだね…!」


と、唯ちゃんが目を丸くしている。



そりゃあそうだよね。



「でも、咲希ちゃん。あの人達を先輩って!7組の人達を知らなかったとは、ちょっとビックリだよ。」



唯ちゃんが苦笑していた。



そ、そうなのか…。



私全然気づかなかったな…。



だって、他のクラスの人達をいちいち見てないよ。


「7組の人達ってそんなに有名なの?」


思わず疑問を唯ちゃんにぶつける。



「そうだね〜……私も入学当初は知らなかったけど、でもすぐに周りがすごく騒ぎはじめてて、
『7組にかっこいい人達がいる!』
て耳に入ってくるし、噂になってるんだな~って!実際7組の教室の前を通ったとき、男子がすごく目立つ人ばっかりでさ!!思わず目を奪われちゃった!それで噂にも納得したし。
それに、何と言ってもあの霧島くんがいるからね!騒がれて当然だよ。」


「えー!?唯ちゃん、霧島くんのこと知ってたの!!?」


と、笑いが治まったちーちゃんが身を乗り出して唯ちゃんに聞いた!


「知ってるというか、同じ中学だっただけで、面識あるわけじゃないよ?」


「同中だったんだ~!ねぇ、霧島くんって中学の時って、どんな感じだったの!?」



ちーちゃんの目のキラキラさが半端ない…!



「私は同じクラスにもなったことないし、詳しくはわからないけど……。とにかく荒れてたかな?!1年生のときにはもう、何回か学校にパトカー来てたっけ…。喧嘩ばっかりで手がつけられなかったみたいで、先生たちがかなり困ってたかな……。それから霧島くん、あまり学校来なくなってたみたいで。
でも、3年生の……一学期頃かな?急に学校に登校するようになってきて、雰囲気も別人というか、すごく大人っぽくなってて!噂だと、実家にあまり帰ってなくて、なんでも社会人の女性の家に寝泊まりしてたとか。」



「「え!!!社会人の女性!!?」」



ちーちゃんと一緒にハモってしまった…!


「ん~、でもあくまでも噂だからね。でもそれからの霧島くんのモテようといったら凄くて!!告白がひっきりなしだったみたい。霧島くんの彼女になりたくて、なんでもこの高校まで追いかけてきた女の子もいるみたいよ!」


「そりゃ~あのモテようじゃ仕方ないよね~。」


と、ちーちゃんが納得する。



「な、なんか、すごいね、霧島くんって……。」


私は圧倒されていた。



なんだか、色々と凄い人なんだなと思ってしまった。


「たしかにめっっっちゃ、かっこいいもんね!!!霧島くん!」



ち、ちーちゃん?!



目がハートになってるけど!?



「それに霧島くんってさ、うちの生徒がヤンキーに絡まれてるところを何回か助けたことあるみたい!それで人気が爆発したみたいだよ?まぁほとんど人から聞いた話だけどね。」


と唯ちゃんが、これで全部かな?という感じで話を切り上げた。


「そっか、これで納得がいったゎ!あの霧島フィーバーの強力すぎる意味がっ!!」


と、ちーちゃんがウンウンと頷く。


「それにしても咲希ちゃんが霧島くんを知らなかったとはね。タイプじゃないの?」


「…え?タイプ?」


サラッとそんなことを言ってきた唯ちゃん。


「咲希ちゃん、他の女の子みたくあんまり騒がないから、てっきりタイプじゃないのかな?って。」



た、タイプ??



タイプってなんなんだろうか…。


「あぁ~ダメダメ!咲希は昔からそういうのに疎いんだ!」


と、ちーちゃんが助け舟をだしてくれた。


「でもさ、さっきの咲希の話の流れの……その……… “先輩” のくだりはちょっと!…ぷくく。それに霧島くんのフルネーム今さら知るなんて……ぶはっ!!」


「千枝ちゃん、どうしたの!?お腹痛いの!?」



ちーちゃんがお腹をおさえているからか、唯ちゃんがまた心配そうに声をかける。



もう!ちーちゃんってば!



間違いなんて誰でもあるのにー…。



この休み時間、私はちょっと拗ねてしまった。





それにしても…。



今朝の霧島くんとの会話をふと思い出した。



『そっか…よかった……!』




最後……、


霧島くん、ホッとしたような…優しい声だったな…。



彼の温かさを初めて知った、そんな気がした。