この時間ならギリギリ帰ってないかも!!



私は廊下にいる生徒たちを縫って走っていく!


ちなみに、笹原さんのクラスを覗いてみたけど彼女は居なかった。



だとすれば校門か、もしくは外かも!


とにかく今日は逃がしてはいけないと思った。


ちーちゃんの事はもちろん、私には言うべきこともあるからだ!






昇降口に着くと、わらわらと生徒たちが靴を履き替えて帰って行く。


その中に笹原さんが居ないか注意深く見ていく…!




どうしよう!




いない!!



もしかしたら笹原さんに気付かれて逃げられたのかも!?


でも、そんなデリケートな女の子じゃない…よね?


「……外に出て、駅の方まで見て行くしかないよね!」


靴に履き替えるため、下駄箱の扉を開けると。



「……ん?これ…は?」



靴の中に小さい紙切れが入っていた。




あれ…?




確か前にもこんなことがあったような……。




そう。


それは私のローファーが自分の手元に戻ってきたときに添えられていた一つのメモ。



今でも覚えている。



あのメモは今も私の制服のポケットにしまってある。


名前は書かれてなかったんだよね…。



今も誰が返してくれたかわからないけど。



そんな過去の記憶と重ねて紙を開くと……。






《大事な話がある。体育館裏で待ってる。 霧島理人》




「え!!き、霧島くん!!?」



なんで!?



なんでわざわざ手紙……!?



そこで私は冷静になってよくよくそのメモを見てみる。



「……それにしても、この字。」



それは見覚えのある字だった。


さっき教室で見た字体と全く同じ!!



「これって、まさか……笹原さんじゃ?!」


そう確信した時、私は決意した。




罠でも、笹原さんに会えるなら……




行くしかない!!




私はそのメモをクシャッと手に握ると、
急いで体育館の裏へと走った!










その頃、5組の教室では千枝の声が響いていた!



そしてそれは廊下にも……。



と、そこへ一人の生徒が通りかかった。




「あれ?二ノ宮さん?何やってんの?」



その人の風貌に生徒たちは避け始めて、
自然と千枝までの道が開けていった。



「ハッ!!ヤ、ヤス兄さん!!」



通りかかったのはヤスだった。



「ものすごい声だよ。これは廊下の端まで聞こえてるだろうな、アハハ。」


「いや、今は笑いごとじゃなくて!」


「ちょっと二ノ宮さん!!貴女いい加減にしてくださる?貴女へはまだしも、先程の生徒にはワタクシは嫌がらせなんてしてなくってよ?!」


「じゃあなんでアンタ、パツキン女の肩もつのよ!?正直にキッパリハッキリ言いなさいよ!!パツキン女と共謀でもしてんでしょっ!!?万が一そうなら、あたしは許さないから!!!!」


「ちょっと、千枝ちゃん!!落ち着いて!」





千枝は揉めていた…。





「パツキン女…?」


ヤスがすぐさま反応する。


「そうです!霧島王子をつけ狙って、あわよくば女王にのし上がろうとしている腹黒の金髪の巻き髪ぶりっこ女ですよ!!名前は…その、忘れたけど……。でも!!そのパツキン女!色んなところで、いじめや嫌がらせしてるみたいで!!咲希にまで手を出してたみたいなんですよ!?」


ヤスが唯に視線を向けると、


「そうなんです……。笹原さんが咲希ちゃんを脅してたことを千枝ちゃんに言ったら、その………こうなっちゃいました………。」


と唯が反省するように俯いた。



「なっ!?そ、そうなの!!??ワタクシ、そのような事、全く知らなかったわ…!!く、悔しい…!ワタクシ、ただ利用されただけなのね!!?そうなのね!?」


「何言ってんの、今さら!!しらばっくれてんじゃないよ!!アンタもその、笹ナントカと一緒になって咲希を脅してたんじゃないでしょうね!!??どうなの!!!?」



千枝の勢いは増すばかり。




そこへヤスが間に入る!



「まあまあ。やめねえか、二ノ宮さん。なんのネタもあがってねんだろ?これ以上は無駄だ。やめときな。」


「うっ!………で、でも!あの……パツキン女が、あたしの大事な、し、親友をぉ~!!うわー!!」




千枝は号泣してしまった。




「そうなんです!それは私も許せません!!正直、咲希ちゃんが今は笹原さん達に嫌がらせされてないかも知らないし……。咲希ちゃん……私達に心配かけたくない!って言ってました……。友達として、何も力になれないことが……すごく悔しくて…!」


唯の目にも涙が滲む。



そんな二人の涙を見て、
ヤスは少しの間黙っていると、ポツリと呟いた。




「じゃあさ、これから反撃しに行かない?」




ヤスの一言に二人はパッと顔を上げる!




「「え?!反撃!??」」




目を丸くする二人の視線を受け止めながら、
ヤスはニッコリと優しく微笑む。




「今日、おっ始(ぱじ)めようと思ってたところなんだ。君たちも良かったら手伝ってくれない?」