「…………。」


「それだけじゃないわ!貴女、鍵を借りる際にわざわざ先生に名乗ったそうね? “1年5組の二ノ宮千枝” って!!もう言い訳はきかなくてよ!?」


「…………。」


「ちょっと!!何を黙って…」



すると、
私と一緒に覗き見てた唯ちゃんがポツリと呟いた!


「この字、明らかに千枝ちゃんの字じゃないよね……。」


「な!?なんですって!!?まさか貴女、二ノ宮さんを庇って言って…」


「千枝ちゃんの字はこんな丸文字じゃないし、もっと雑で、線・枠を無視して書くから。」


「え”!ちょっと?唯ちゃん!?」


「確かに…。ちーちゃんの授業ノートと比べてみたら解るんじゃないんですか?」


と、私は提案してみた。




早速見比べてみると……。




「…………。」


「ほら!かなり違うじゃん!!あたしの字じゃないし!」


「…………。」


「第一、嫌がらせするんならそんなわざとらしい証拠残さないでしょ!」


「…………。」


「それにその先生とやらも、あたしらの学年の先生じゃなかったんじゃん?だったら顔知らなくて通るし!」


「…………。」


「それにあたし、その時間なら彼氏と会ってて一緒に登校してたしさ。」


「…………二ノ宮さん。」


「なによ?まだ文句あんの!?」


「貴女…………字が汚すぎるわ。」


「え”!!ちょっと!?流石にそのオチは酷くない!?つーか普通謝るのが先でしょッ!」



た、確かにそうなんだけど…、


やっぱり初めて見る人にとってはちょっと衝撃だよね……。



私は不覚にもライバルの子に同情してしまった。



「そ、そうね。貴女の字ではないわね…。雲泥の差だもの。ごめんなさい!二ノ宮さん!」


「あんた……謝ってるの?それとも傷口えぐってんの?」


「じゃあ、だったら誰がこんなことを…!!」


ちーちゃんが横目で睨む先に、ライバルの女の子がオロオロと動揺している!




…………。





…………まさか!




ある可能性が、私の脳裏によぎった!



まさかとは思うけど……。


「あの、ちーちゃん……二ノ宮さんが、あなたに嫌がらせしたって誰から聞いたんですか?」


「……え?あ……そ、それは、………言えないわ。だ、だってその子、 “バレたら二ノ宮さんにいじめられる!” って、泣いてらしたから……。ご、ごめんなさい。」


「へ!?あたしが!??誰をいじめるって!!??」


「まぁ!そのお顔、般若のお面のようよ!?」


「ちょっとあんた!さっきから喧嘩売ってんでしょ!?」


「ちょっ!ちーちゃん、落ち着いて!……あの、もしかするとその子。笹原さんじゃないんですか?」


「なっ!!!ど、どうしてそれを!!!貴女……何者なの?!」




やっぱり!!





「……わかりました。私が犯人をここに連れて来ますので、しばらく待っていて下さい。」


その言葉を残して、私はすぐに昇降口へと急いだ!!



「え!?咲希!??」


「さ、咲希ちゃん!!待って!!」


ちーちゃんと唯ちゃんの声が後から聞こえてきたけど、
私は振り返らず走った!





許せないっ!!





ちーちゃんを…!





私の大事な親友を罠にはめるなんて!!





絶対に許さない!!!





私の怒りは怒髪天を衝く、かつてないものだった。