桜子さん達から私を助けてくれた霧島くんはその後、
私をお姫様抱っこしたまま、コピ・ルアックへと向かった。



大通りは出ずに小さな路地を進んで行ったから、あまり人通りは無かったけど。




でも!!





や、やっぱり、恥ずかしいって!!




見上げると霧島くんの端正な顔が直ぐ目の前にあって、
私はそれ以上顔を上げられなかった……。


お店に着くまで私達は言葉を交わすことはなく、
ただ霧島くんの靴音だけが響いていた。









コピ・ルアックに着くと、正面の入り口からは入らず、なぜか裏から霧島くんは入っていく!



「あ、あの!もう立てるので、おろしてください…!」


きっと重いし!


ドア開けるときくらい、おろしても構わないのに!



そう思って霧島くんに声をかけるけど…。



「………ダメ。」




と、却下されてしまった…。



うっ……。



絶対重いはずなのに。



霧島くんは器用にドアを開けると、
中に入っていき、奥の部屋へと進んでいく。






ここは、スタッフルーム…かな?


ソファーや小さなテーブル、ロッカーがきちんと配置されていて、綺麗に片付いている。


霧島くんに、そっとソファーに座るようにおろされた。



その時、一瞬彼の髪の毛が私の頬に触れる!!


「っ!!」


「どした?痛かったか!?」


「い、いえ!!なななんでもないですっ!!!」


霧島くんに触れるのは久しぶりで、
そう意識し始めたら体中の熱が上がってきた…!




すると霧島くんが私の目の前で屈んだ。




「……咲希。ごめんな。」


「え……?」


そして彼は突然、私に対して頭を下げてきて、
掠れるような声でそう呟いた。



ど、どうしたんだろ?!




何が “ごめん” なんだろう?!!


意味がわからなくて戸惑っていると、霧島くんが再び口を開いた。


「俺……、咲希をスゲェ傷つけた!言葉でどんなに謝っても償いきれねぇ…!!」


「霧島く……。」


「許してもらえなくてもいい。でも!いつかは絶対謝りたいと思ってた!本当に悪かった……!すまねぇっ!!」


「……っ。」





そんなこと……。




そんなこともう、どうでもいいのに……!



だって!



霧島くんは助けに来てくれた!!



また “咲希” って呼んでくれた……!!



私は……



それだけで……



もう!



するとこれまでとどめていた想いが一気に溢れだした!






「霧島くん、好き…。」







「っ!!!!」






「好き……なの……。どうしようもなく、霧島く……のことが………!」




「咲…希……。」




「と、友達と……してじゃなくて、一人の……お、男の人……として…!!」




どうしよう。



もう泣きそう。



「霧…島くん…のこと……が、………っ、好き…です…っ。」



「ーーッ!!!」




その時、



私の唇に温かいモノが触れた。




!!??





ただ、触れただけのソレは、ゆっくりと私からはなれていき、
目を開けると霧島くんの綺麗な顔が私の目と鼻の先にあった!!!



「俺から言うつもりだったのに、先越された…。」


フッと霧島くんから微かに笑みがこぼれた!



「っ!!」




もう、見れないと思ってた彼の笑顔が私の視界いっぱいに広がる!!



何度も願ったことが叶って、

それが本当に嬉しくて、

私は涙がポロポロとこぼれ落ちてしまった!



そして、私の大好きな笑顔で霧島くんは、真っ直ぐ私の目を見て言ってくれた。



「俺も咲希が好きだ!初めて会ったときから、ずっとずっと好きだった!!」


「……っ。」




霧島くん……!




想い人に、面と向かって “好き” と言われて、
心臓がとまりそうで……。



そんな私に、彼の温かい大きな手のひらが私の固くなった手をそっと包み込んでくれる……。


ドキドキと心臓はまだうるさいくらい高鳴ってるけど、
彼の笑顔や温かさが、私達の離れた心をひとつにさせるようで、
前よりも急速に距離が縮まるのを感じた!!



「私も……好き……。」


もう一度伝えたくて、言葉にする。


すると霧島くんはフワッと、
まるで花が咲いたように微笑んで、優しい目で私に伝えてくれる。


「うん。俺も。………………知ってた?俺、入学当時から咲希に一目惚れしてたんだぜ?」


「え………。」




いま、なんて……。



それは私には思いもよらない彼からの告白だった……!





「俺にはもう、咲希しか見えてなかったよ。ずっと。」