「言っとくけど、りんはもう俺のだから。次こんなことしたらただじゃ済まねぇぞ」



優しくてユルユルな先輩が初めて見せた、迫力満点の男らしい表情。


ついドキッとしたのは言うまでもない。



「りん。行くよ」



壁ドン時に落としてしまったあたしのパン袋を拾って、スッと手を差し出してくる。


いつもと違う精悍な顔付き。


ゴツゴツした大きな手。


何だかすごく、 "男の人" に見えた。



「……うん」



キュッと手を握って、昨日のデートの時みたいに2人並んで歩き出す。


ちらっと後ろを振り向けば、伸平が不愉快そうに眉を寄せてあたしたちを見てる。


もしかして……マジで嫉妬?


それとも、ただ嫌がらせしたいだけ?


前者だったら作戦成功ってことで喜ぶべきだけど、アイツの性格なら後者の可能性の方が高いよなぁ。


……ふむ。


まぁまだ色々と不確かだし、今さっきの奇行は深く考えないようにしよっと。


今はとりあえず、ご立腹のアッくん先輩をとりなす方を優先せねば!