「……またその顔。誘ってんの?」
「へ?」
「赤い顔して上目遣い。それ反則だってこの前注意したじゃん」
茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべ、もともと至近距離にあった顔をさらにずずいと近付けてくる。
まぶたを下ろしたのは条件反射で。
ほんの一瞬触れただけの軽いキスだけど、まだまだ慣れないらしく心臓が跳ねる。
「あー…やっぱ、こんなんじゃ足んねぇわ」
えっ? と声を上げる間もなかった。
気付いた時には、もう唇を奪われていて。
それが、次第に深いものへと変わっていく。
「んッ……」
息が苦しくなって、トントンと先輩の胸を叩く。
ゆっくりと唇が離れ、妖しく微笑む彼の顔がドアップで映った。
「ふっ…。りん、かわい」
「う、うっさい」
んなマジマジと見んなし。
せっかくの誕生日が恥ずかし死にで命日と化すわ。

![浮気男に逆襲を![番外編集]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)