「── "すがり女" よ」



高く可愛らしい声で紡がれた単語。


ピタッと足が止まる。


今……何て言った?



「聞こえなかったかしら? すがり女サン」



その言葉に呼応して、クスクス笑う声が大きさを増す。


それでようやく気が付いた。


さっきからみんながあたしを見て笑ってるのは……そういうことだったんだ。


伸平があんな風にデマを言いふらしたせいで、あたしが、自分をフッた男に未練がましくすがるみっともない女になっちゃったってわけね?



「ほォう……」



黒いオーラをまとった声が漏れる。


塚原伸平よ。



……やってくれたな?