はぁ、と呆れのため息をこぼしたその時。 そこからはまるでスローモーションの世界で。 大きな影が迫ってきたと思ったら、唇に何かが触れる感触。 「──!」 驚愕に目を見開く。 何…してんの。 なんでいきなり、キスなんか…! 「んッ……」 固く結んだ口をこじ開けるようにして、熱い舌が乱入してくる。 体験したことのないその感覚に、ぶわっと鳥肌がたった。 「──やだっ!」 必死に顔を背けて、ごしごしと手で口を拭う。 うっすらにじむ涙を振り切るように頭を振り、怒りに震える拳を握りしめた。