ドンッと壁に背がぶつかる。
──…もう逃げ場がない。
しまった、と舌打ちした次の瞬間。
「 ! ? 」
強引に手を引かれ、3つ隣の空き教室に連れ込まれる。
伸平は後ろ手に鍵を閉め、戸惑うあたしをずんずんと奥へ引っ張っていく。
そして──ダンッ!
数日ぶりの、壁ドンを仕掛けてきた。
効果音的には勢いが増してるから、厳密に言うと壁ダンになるのかな?
……って、今はそんなこと考えてる場合じゃないか。
苦笑をこぼし、キッと顔を引き締める。
「んっとに芸がないね。このパターン何回目だと思ってんの?」
「……」
「さっき、あたし言ったよね? もう遅いって」
「……」
「あたしが好きなのはアッくん先輩なんだから、こんなことされても困るんだけど」
ジロッと冷めた目を向ける。
せっかくやんわり断ってあげたのに、何でわざわざ嫌がるようなことして怒らせるかな。
3倍返しの主義に反してまで穏やかに対応したあたしの努力が無駄になるじゃん。
もう、勘弁してくださいよ。マジで。

![浮気男に逆襲を![番外編集]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre1.png)