「わたしもね、一番星を見つけるのが好きだよ。小さい頃から、今もずっと」
ナツくんと同じように一番星に手を伸ばす。
指先と重なった星が一際瞬いて、本当に触れたような錯覚に陥った。
特別だと感じていたのは、わたしも同じ。
どの星よりも先に輝くそれは、目印のようで。でも、見つけないと出会えない。
そんな確かなようで不確かな存在だからこそ、見つけたいと思えたんだ。
誰よりも早く。
他の星の光に埋もれてしまう前に……。
見失わないように、何度も見つけては祈った。
「……一番星に祈り続けるとね、いつか願い事を叶えてくれるんだよ」
はるか空高くで煌めく存在を掴もうとするけど、虚しく空気を掴むだけで。
光を得ることが出来なかった手を、寂しい気持ちでゆっくりとおろした。
それから、わたしと向き合う体勢に戻っているナツくんと目線を合わせた。
「おばあちゃんから聞いた迷信なの。今みたいに一番星だけが空に浮かんでるときに毎日祈るとね、いつか願い事を叶えてくれるんだって」
一番星を見ていたら、ついつい“一番星の祈り”の話をナツくんにしていた。
興味深そうに聞いてくれるものだから、つらつらと唇が動く。
「願い事によって、どのくらいの期間を祈ればいいのか変わるみたい。……まあ、この祈り続けるっていうのが難しいんだよね。小さい頃から一番星を見つけたくて頑張ってるけど、なかなかね……」
「ああ、なるほど。一番星って、意外と見逃しやすいからね。確かにそれは難しいな」
苦笑するわたしを見て、ナツくんはすんなりとこの迷信の難しさを理解してくれた。
さすが小さい頃、一番星を見つけるのが好きだっただけはある。



