いつでも一番星



「ほんとだ。一番星出てるじゃん」


わたしの言葉と空に向けた視線の意味を理解したらしく、ナツくんが振り返って頭上を見上げる。

声が少し、嬉しそうに跳ねていた。


「一番星とか、久しぶりに見たなぁ」

「わたしも……久しぶりかも」


本当に、一番星を見たのは久しぶりだった。


一番星を見つけるたびに、その輝きに祈る。それがわたしの日課。

だから明確な願い事はなくても、いいことがあればいいなぁという思いで祈り続けてきたけれど。
最近はほとんど、その姿を見つけられずにいた。

ふとしたときに一番星のことを思い出して空を見上げても、すでにいくつも星が現れていたり、もはや星ひとつ見えない冴えない空の日々が続いていたんだ。


だから、数週間ぶりに一番星に出会えて、懐かしさに似た温かい気持ちで胸がいっぱいになる。

一番星の光が瞳の奥に焼きついた。


「俺さ、小さい頃、一番星を見つけるのが好きだったんだ」


目線を一度わたしに向けたナツくんは、再び空の煌めきに夢中になる。

明るくて優しい声色が心地よくて耳を傾けた。


「ほら、こうやって手伸ばして星を指差してさ。“一番星、見ーつけた!”って、よく言ってた。空に一番乗りで現れた星を、誰よりも先に見つけるのが好きだったんだよ。なんか、それが特別なことに感じられてさ」


ナツくんは言葉のとおりに長い指先を伸ばした。

捕らえたのは、わたしたちの目に映る唯一の星。

無邪気な笑顔には、ナツくんの幼い頃の影が宿っているみたいだ。