いつでも一番星



「平岡さん、これめちゃくちゃうまいよ! 俺、すっげー気に入った!」

「そう? 気に入ってもらえたならよかった! ……あ、もっと食べる?」

「食べる!」


タッパーの残りを勧めると、ナツくんは即答した。
そして、嬉しそうに笑って食べてくれた。

うまいうまいって、何度も言ってくれて、目の前でまともに聞いているとちょっと恥ずかしくなるほどだった。

でも表情をゆるめておいしそうに食べてくれる姿を見ていれば、その言葉がお世辞じゃないのはよくわかる。

だから恥ずかしい気持ち以上に温かい喜びもわきあがってきて、自然と笑顔になった。

ナツくんの無邪気な笑顔を、もっと見ていたいって思ったんだ。


……やっぱり、誰かに食べてもらうのっていいなぁ。

自分で作ったお菓子を自分で食べる瞬間は幸せだけど、それを誰かに食べてもらう瞬間もまた幸せな気持ちになれる。

おいしいと思ってもらえたなら、なおさらだ。

このお菓子は部活のみんなで作ったから、決して自分だけで作ったとは言えないけど。
自分が作るのに携わったお菓子を、ナツくんが今、喜んで食べてくれている。

誰か……好きな人が、おいしいと思ってくれた。

これほど特別で幸せな瞬間って、きっとないよ。

わたしすごく……幸せだ。


またナツくんの前で顔がだらしなくゆるんでしまうけど、ナツくんはパウンドケーキに夢中で見られていないから助かった。

気がつくとタッパーの中には、あと少ししか残っていない。

もともとそんなに多くは入っていなかったから、あっという間に減ってしまったみたいだ。