いつでも一番星



トートバッグの中からタッパーを取り出して、再度ナツくんと向き合う。

状況がわかっていないナツくんにも理解してもらいやすいように、タッパーの蓋を開けて中身を見せた。


「これ、調理実習で余ったやつなの。お菓子好きなら、よかったらどうかな? オレンジパウンドケーキなんだけど」

「えっ、もらっていいの?」

「うん、もちろん。でも残りものだし、嫌なら全然いいんだけど……」

「嫌じゃないって! むしろ喜んでもらうよ! すっげー嬉しい!!」


語尾が小さくなるわたしの声に重ねて、ナツくんは勢いよくそう言った。

あまりにも豪快に弾けた笑顔で嬉しそうに言われるものだから、意外な反応に目が丸くなった。

調理実習で作ったとはいえ、手作りのものは嫌がって受け取らないかなぁって不安があったけど……。
どうやらそれも、取り越し苦労だったらしい。

びっくりするほどの好反応はちょっと戸惑ってしまうほどだけど、喜んでもらえたならわたしも嬉しい。

外にいるナツくんが取りやすいように、タッパーを持つ手を伸ばした。


「はい、どうぞ」

「ありがとう。じゃあ遠慮なく、いただきまーす!」


ナツくんはパウンドケーキのひと切れを手にすると、豪快に頬張ってあっという間に口の中をいっぱいにした。

膨らんだ頬をもぐもぐと一生懸命動かしている姿は、子供みたいに無邪気でかわいらしい。

やがてごくんと喉仏がはっきりと出ている喉を上下させると、目を輝かせながらわたしを見た。