たった1球を当てられただけ。
それなのにナツくんは大袈裟なほど笑ってわたしを見ていた。

そのわたしにだけ向けられた笑顔はとても眩しくて。
パネルが開いたことよりもその表情に、わたしの胸は高鳴っていた。


「ナツくん、ありがとう! パネルに当てられたのはナツくんのおかげだね!」

「ううん、平岡さんが頑張ったからだよ! 本当によかった!」


ナツくんはそう言うと左手を軽く挙げた。
その意味はもうわかっていたから、にっこりと微笑んでハイタッチをする。

今日、二度目のハイタッチだ。
嬉しくて、なかなか笑顔が消えない。


「よし! 平岡さんも無事に投げられたことだし、俺はもう1回やろうっと!」

「えっ、ナツくんまたやるの?」

「もちろん! 俺、投げるの好きだしさ!」


ナツくんはそう言うともう、さっそく2ゲーム目に突入していた。

子供みたいな無邪気な笑顔に胸がくすぐられる。

完全に野球モードになっているナツくんに驚いて茉理ちゃんたちに目で訴えると、首をすくめながら苦笑いを返された。


「いつものことなんだよね、ああなるのは」

「そうそう。ナツのやつ、投げ出すとなかなかやめないんだよなぁ。毎回待たされる身としてはうんざりだよ」


横峰くんは呆れたように頭の後ろで手を組み、近くの壁に背中を預けた。

言葉のわりにナツくんを見る視線は優しいから、そこまで待つのは嫌じゃないみたい。
ナツくんのよき理解者、みたいな顔をしている。