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好きな人の姿とか、声とか。

どこにいても、いつでもすぐに見つけたり反応したりできる。

そんな好きな人を見つける恋のレーダーというものは、どうやら紙に印刷された名前にさえも素早く反応するみたいだ。


「ナツくんは6組か……」


高校3年生として迎える新学期、初日。

新しいクラス名簿が貼られている昇降口のガラス扉の前には、それを我先に見ようとするさまざまな人と、盛り上がったり落胆する声が密集していた。

押し潰されそうになりながらも何とかそんな中に混ざっていたわたしが呟いた声も、あっという間に吸収されてその一部となる。


背の低いわたしが必死につま先立ちをして、やっとのことでひしめく人の間から垣間見ることができたクラス名簿のプリント。

その中から最初に見つけ出したのは慣れ親しんだ自分の名前ではなくて、いつでも一瞬で惹きつけられる好きな人……ナツくんの名前だった。

まるでそこにスポットライトが当てられているみたいに目立って見えた、その名前。
さっそく見つけた好きな人の名前に反応して心が静かにときめく。

でも、そんな淡いときめきはすぐに消えてしまうことになった。


「……ない、よね」


縦に五十音順に並んでいる、各クラスの名簿。

ナツくんの名前があった6組の名簿をナツくんの名前を拠点に上へと辿るけれど、そこにわたしの名前はなかった。

名字の加減でわたしの名前の方がナツくんのものよりも上に並んでいるはずだけど、再度上から下まですべての名前を確認してもそこに自分のものはない。

……つまり、わたしはナツくんとは別のクラスということだ。