「またね、平岡さん」

「えっ!? ……あっ、うん! またね!!」


思いがけない突然の挨拶に、またもやテンパってしまった。

だけど慌てて言葉を返せば、ナツくんはごく自然に笑ってくれた。

何気ない笑顔に、わたしの身体は沸騰したみたいに熱くなる。

ナツくんが去っていく背中を見つめながら、ついつい呆けて立ち尽くした。


なんか……反則だよ。

滅多に交わさない挨拶をしてくれたうえに、あんな顔して笑うなんて。

ナツくんにとっては誰にでも見せるもので、きっと特別なものでもなんでもないと思う。

だけど、すぐそばで。真っ直ぐ向き合って笑いかけられたら。

嬉しくって、恥ずかしくて。
……顔、ゆるんじゃうよ。

憧れの人の笑顔ほど破壊力があるものなんてきっとない。他に知らない。

それぐらいナツくんの存在は、わたしの中で大きいんだよ……。